地蔵菩薩法/覚禅鈔(一巻)【寺宝解説】

地蔵菩薩法(じぞうぼさつほう)/覚禅鈔(かくぜんしょう)のうち一巻/鎌倉時代

巻子本装1軸/縦28㎝ 
紙本/墨書/白描及着色の図像を挿入
鎌倉時代/延慶3年(1310)写本

 覚禅鈔とは、平安時代末期から鎌倉時代の初頭にかけて真言宗の僧侶の覚禅(かくぜん)により編纂された仏・菩薩・明王などの修法とそれぞれの図像を集積したものです。覚禅鈔は、別名を百巻抄(ひゃっかんしょう)とも称される100巻以上もある著作です。
 清浄心院が所蔵するのは、その中の地蔵菩薩法の1巻です。鎌倉時代の延慶3年(1310)に実遍(じっぺん)という僧侶が、和泉国信太森(いずみのくにしのだもり:現在の大阪府堺市)の菩提院で書写したものです。菩提院は今でも法灯を繋いでいる寺院です。清浄心院では1巻だけを今に伝えていますが、この実遍の書写による覚禅鈔は高野山の塔頭寺院の宝亀院や高野山大学図書館などに点在しています。奥書には実遍が書写する以前の、書写をされた来歴を次のように記しています。

建久八年八月廿六日書了
 元久二年潤七月四日書写之 貞玄
 宝治二年三月八日於法花山寺以松橋之本書写了
                    頼賢
 弘安四年辛 巳七月四日於高野山勧学院□信現□□書写了
                    金剛仏子頼空
 正応三年八月廿日於釈迦文院書写了
 正安二年庚 子 四月廿日
 延慶三年庚 戌 卯月七日於泉州信太森菩提院書了 
仏子実遍

 建久8年(1197)・元久2年(1205)・宝治2年(1248)・弘安4年(1281)・正応3年(1290)・正安二年(1300)と6回の転写を経て、延慶3年(1310)に実遍により成ったものと分かります。描かれている地蔵菩薩の図像は1点が白描ですが、他は鮮やかな着色が施されています。鎌倉時代の古写本は貴重な遺物でもあります。

木下浩良