高野山の庶民信仰を受け継ぐ

清浄心院 高野山文化歴史研究所は「雑事登り」を応援していきます

高野山の庶民信仰を受け継ぐ

 高野山には毎月1回、新鮮な野菜を奥之院御廟の弘法大師に供えたという「御番講(ごばんこう)」と言われる庶民信仰があります。これは高野口町大野地区の農家がつくる中嶋大師講が寛永年間(1624~1644)から約340年近く続いていたことが判明したもので、平成8年にその資料を発見したのが元奥之院維那であり、高野山大学名誉教授だった日野西真定氏。当研究所長の木下浩良氏の師匠です。

 御番講は「雑事(ぞうじ)登り」ともいわれ、紀伊国名所図会などにも記録があるもので、日野西氏が初めて帳面等を調べ始めたと言います。もともと中嶋大師講がある大野地区は高野山の寺領地で、最初は年貢を納めていましたが、年貢がなくなってからも豊作祈願のためにお供えをしていたそうで、この御番講はカタチを変えながら、少なくとも昭和40年代まで続いていたことになります。それまで農家は奥之院はじめ、各塔頭寺院へ車で持っていっていたそうで、奉納は慣例化され、塔頭寺院もそれを普通に受領していたそうです。

 この「雑事登り」を復活させようという取り組みが近年始まっています。思いに共感した高野七口再生保存会の会長・池田和夫さんと、高野山の清浄心院がタッグを組み、清浄心院に定期的に野菜を運び、「雑事登り」野菜として宿泊客を満たしているのです。清浄心院が2022年より大阪の料亭『味吉兆』とコラボレーションした精進料理会「第一回精進料理会」、「第二回精進料理会」でも一部使用されました。

 池田さんが清浄心院に運ぶ野菜は高野山麓野菜。山麓で生産された季節の野菜や果物たちで、野菜の中にはゴツゴツして太いけれど、香りが良くてシャキシャキした食感のゴボウ「はたごんぼ」という江戸時代から作られてきた伝統野菜が入ることもあるのだそう。新鮮でおいしい地野菜を、信仰の厚い数々の農家をまわり、みんなの思いを背負って高野山へ向かうと言います。池田さんは現在、この伝統を受け継ぐ後継者を募集中。興味ある方は当ホームページまでご連絡ください。

写真/高野七口再生保存会の会長・池田和夫さんと、日野西真定氏の弟子である木下浩良所長(清浄心院にて)。