第二回 高野山精進料理教室を開催
清浄心院では、高野山の歴史を生かした新しい精進料理を探求し、2022年から大阪の料亭『味吉兆』と連携した食事会や料理教室を開催してきました。料理教室はもともと清浄心院のランチや宿坊で提供する食事の勉強会として始まったものですが、2024年から一般公開を開始。7月に第一回高野山精進料理教室を開催。好評につき去る10月7日に第二回高野山精進料理教室が開催されました。今回はWebサイト等から予約した約20名が参加しました。
教室は『味吉兆』主人・中谷隆亮氏が参加者の前で調理をしながら料理の説明をするデモンストレーションスタイルで行われ、和歌山県産の黒あわび茸を使用した3品の精進料理をレクチャーいただきました。
黒あわび茸は、幼い子どもの手のひらほどもある大きさが特徴です。亜熱帯地方で育つ稀少価値の高いきのこで、コリコリとした食感が鮑に似ていることから、あわび茸という名前がつきました。黒あわび茸はパントテン酸という栄養成分が含まれており、疲労回復や美容にも効果が期待される食材です。
中谷料理長は「あわび茸はおひたしなどにしてあしらいで使うことはありますが、黒あわび茸を主役にする献立ははじめての試み」と言います。この日料理長が考案したのは「黒あわび茸と季節の果物の胡麻クリーム和え」、「黒あわび茸の巻き寿司」、「黒あわび茸の生春巻き」の三品でした。
黒あわび茸と季節の果物の胡麻クリーム和え
軽くソテーした黒あわび茸と季節の果物に、ねり胡麻に酒(煮切ってアルコールを飛ばしたもの)、醤油、砂糖を加えた胡麻クリームをまとわせたエキゾチックなひと品。セリを散らして目にも鮮やかに。果物の味を引き立たせるため、胡麻クリームの甘さは控えめに仕上げるのがコツ。
黒あわび茸の巻き寿司
甘辛く炊き合わせた黒あわび茸とセリをとり合わせた巻き寿司。デモンストレーションでは飾り包丁を入れた黒あわび茸をネタに握り寿司も披露してくださいました。黒あわび茸の旨みに、おろしたてのわさびとしゃっきりとした歯応えのセリがみずみずしさを添えます。
黒あわび茸の生春巻き
ベトナム料理でお馴染みの生春巻きを精進料理に仕立てたユニークなひと品。春巻きの皮(ライスペーパー)は水で戻すのが一般的ですが、椎茸としめじでとった出汁で戻して旨味をプラス。中の具材は食べやすく切った隠元豆、オクラ、そしてあわび茸。ねっとりしたオクラやあわび茸の食感を楽しむ遊び心あふれる味わい。
三品を味わった後には、黒あわび茸の生産者さんが推奨する食べ方のひとつ「黒あわび茸のステーキ」もつくっていただきました。飾り包丁を入れた黒あわび茸に塩をしてフライパンで軽くソテー。最後に削りたてのゆずの皮を散らして、おろしたてのわさびを添えました。シンプルながらも、食材の香りが際立つ特別なひと品となりました。 参加者からは「絶妙な配合と食材の取り合わせ」と感嘆する声が聞こえ、大満足の勉強会となりました。
文/ヘメンディンガー・綾